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知って得する法律情報

交通事故(3)〜後遺障害について

2011年10月8日

交通事故(3)
後遺障害

 交通事故は、いつも突然起こり、被害者の方の生活を一変させてしまいます。特に治療を尽くしても後遺障害が残る場合、被害者の方の苦しみは筆舌に尽くしがたいものです。
今回は、交通事故による後遺症について、被害者はどのような請求ができるか、またその手続などをご説明します。

1後遺障害とは

 後遺障害とは、事故によるケガの治療を継続してもこれ以上症状が改善する見込みがない状態(=症状固定)に至ったときに、なお身体に残存する精神的・身体的な毀損状況を指します。たとえば、身体の一部の欠損、PTSD、一定の外貌の醜状などが、後遺障害に含まれます。
ただし、後遺障害として損害賠償を請求できるのは、労働能力の喪失を伴うもので、その程度が自動車損害賠償保障法施行令2条、別表後遺障害別等級表(損害保険料算出機構HPhttp://www.nliro.or.jp/service/jibaiseki/shiharai/list.html)に該当するもののみです。事故による後遺症のすべてが該当するわけではないことに、注意が必要です。そして、裁判における等級への当てはめは、労災保険の障害認定基準(厚生労働省HPhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken03/index.html)に依拠して行われることがほとんどです。

2 後遺障害の認定

 後遺障害に対する自賠責保険金を受領するには、損害保険料算出機構による等級認定を受ける必要があります。認定手続に際して、後遺障害診断書をはじめとする医療記録を提出する必要がありますが、特に後遺障害診断書は、等級認定を左右する大切な書類です。主治医と面談し、十分な内容を記載してもらうようにしましょう。なお、等級認定に不服がある場合、異議申し立てをすることができます。

3 後遺障害と損害賠償

 後遺障害が残った場合、まずは、後遺障害逸失利益を請求することができます。後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残らなければ得られたであろう収入金額のことです。
また、後遺障害による精神的苦痛については慰謝料を請求することができます

4 後遺障害逸失利益の算定

 後遺障害逸失利益は、被害者の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間−中間利息(一時金として受け取ることから生じる将来の利息)と算定します。中間利息の控除については、控除すべき将来利息を年5%として、被害者の残就労可能年数ごとに計算したライプニッツ係数を用いるのが通常です。
よって、具体的な計算式は、
逸失利益=被害者の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
となります。
基礎収入は、原則、事故前の現実収入によりますが、将来収入が考慮される場合もあります。労働能力喪失期間は、症状固定日(18歳未満の未就労者は原則18歳)から原則67歳までとされます。

2011/10/2
弁護士 裵明玉
(ホウネットメールマガジンより転載)

(連載の他の記事は下記のとおりです)
交通事故(1)〜請求の相手方、損害の種類(概要)

交通事故(2)〜自賠責保険と任意保険

交通事故(4)〜休業損害

交通事故(5)〜逸失利益

交通事故(6)〜過失相殺

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