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事務所だより

~15周年特集 信託を利用した成年後見の事案~

2016年3月23日

(1)後見制度支援信託とは
 後見制度支援信託とは、被後見人となられた方(ご本人)の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。
 財産の管理・利用の適正を図るためには、弁護士などの専門職後見人を選任するという方法もありますが、この信託を利用する方が経済的なコストは低いとされています。
 また、財産の大部分を信託銀行が管理することにより、後見人による使い込みなども防げることから、2011年4月の導入後、裁判所も積極的に推進しています。

(2)私の事例
 私は、まだ制度が導入され間もない頃、この制度を利用する案件を担当しました。おそらく愛知県内でもまだ2件目か3件目という珍しさでした。
 ご本人の財産が預貯金のみであったことから、裁判所は支援信託の利用が適していると判断し、後見人としてご本人の家族(親族後見人)とともに私(専門職後見人)を選任しました。
 私の役割は、支援信託の利用の適否を判断し、適当であれば信託契約を締結し、親族後見人に引き継ぐことです。
 信託契約は、信託銀行との間で締結します。そこでどの銀行が最も良いサービスを提供するか比較検討をしなければならないのですが、当時はまだどの銀行もこの制度について詳しくなく、サービス内容を把握するだけでも一苦労でした。
 無事、契約を締結し、親族後見人にバトンタッチをすることができたわけですが、やはり一般の方は信託契約になじみがなく、また裁判所と直接やり取りをしていくことも負担であることから、その後も継続的に相談をお受けしていました。
 ご本人のための柔軟な財産管理ができないことなどから、支援信託制度には批判もありますが、利用が進められている以上、弁護士として適切な運用に関わっていく必要があると感じた一件でした。

弁護士 鈴木哲郎

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