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知って得する法律情報

デジタル遺産にご用心

2025年5月2日

 デジタル遺産という言葉をご存じでしょうか?デジタル遺産とは、亡くなった人がデジタル形式で保管していた財産をいいます。暗号資産(仮想通貨)や電子マネー(PayPay、d払い、楽天ペイ、マナカなどの交通系電子マネーetc)、クレジットカードのポイントやマイレージ、パソコンやスマートフォンを用いて制作された音楽や画像、動画などのデジタル著作物(著作権)、ネット銀行やネット証券の口座などが該当します。デジタル遺産も不動産や預貯金のように相続の対象になります。

 もっとも、デジタル遺産には、不動産などの相続とは異なる特色があります。
 第一に、相続人による把握が難しい場合があることです。亡くなった方と日常的に交流を持っていなかった相続人の場合、自宅の遺品整理を行っても、PCやスマートフォンの中を見られない場合、デジタル遺産の存在に気づかないことが起こりえます。デジタル遺産の把握漏れが生じると、後から相続税の追徴課税を受けるおそれもあります。

 第二に、デジタル遺産の中には、相続人が存在を把握していたとしても、パスワード等が分からない場合、引き継ぐのが難しいものがあることです。ネット銀行やネット証券については、通常の預金や証券のように、パスワード等がなくても相続手続きが可能です。しかし、暗号資産(仮想通貨)には、日本の暗号資産交換業者の口座で保管されているものについては相続手続きが確立されていますが、海外事業者が運営するウォレットサービスで保管している場合、亡くなった方の個人管理になるため、管理に必要な情報(アカウントやパスワードに相当する情報)を忘れてしまうと上手く引き継ぎができないケースがあります。

 最近では、後期高齢者の方々も様々な場面で電子マネー決済を行っているのを見かけます。今後デジタル遺産のない相続のほうが珍しい時代が訪れるかもしれません。

 デジタル遺産を保有している人は、相続人がスムーズにデジタル遺産を引き継げるように、エンディングノートなどにデジタル遺産の一覧や、ログインIDやパスワード、相続の方法などをまとめておくなど、生前の対策を取ることが重要となります。また、パソコンやスマートフォンの中だけに保管されているデジタル遺産は、機器の故障によって失われてしまう可能性があるため、バックアップを取っておくことが大切です。

弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています

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