相続放棄について
2025年8月1日
「亡くなった父宛の借金の督促状が届いた」これは相続問題で実際によくある相談のひとつです。親族の死後、思いもよらない借金が発覚し、驚きとともにパニックになる相続人も少なくありません。督促状に焦って、言われるがまま支払ってしまう前に、まずは落ち着いて弁護士に相談しましょう。支払ってしまったり、そのまま放置すると、取り返しのつかないことになってしまう場合があります。
相続と聞くと「財産がもらえる」というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし実際には、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続することになります。結果として、自分に返済義務が生じてしまうのです。
そうしたリスクに備えるために知っておきたいのが「相続放棄」という制度です。相続放棄とは、被相続人の財産を一切引き継がないという意思を家庭裁判所に申し出る法的手続きのことです。
ただし、注意点がいくつかあります。相続放棄は被相続人の生前に行うことはできません。また、他の親族に「私は相続しない」と伝えるだけでは足りず、必ず家庭裁判所での手続が必要です。さらに、相続放棄には期限があり、原則として「相続の開始を知ってから3か月以内」に手続きをしなければなりませんが、期間経過後でも可能な場合もあるので一度弁護士に相談をすることをお勧めします。
突然の相続トラブルに巻き込まれないためにも、相続に関する基本的な知識を持ち、いざというときに適切な判断ができるよう備えておくことが大切です。
弁護士 村上光平(名古屋北法律事務所)
(「名古屋北部民商ニュース」へ寄稿した原稿を転機しています)