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事務所だより

国民投票法案の国会審議をどう見るか3 豆電球No.22

2007年4月27日

国民投票法の国会審議をどう見るか3

どうやら国民投票法案の連休直後の強行採決は遠のいたようだが、与党は、5月中には必ず採決に持ち込む構えと言われており、依然として情勢は緊迫している。
今回は、国会審議の中での民主党の姿勢について、である。それを通じて、二大政党制というものを考えてみたい、と思う。
民主党は、与党側の修正案についても、衆議院の委員会、本会議のいずれにおいても反対の姿勢を貫き、参議院でも反対の態度を崩していない。私は、この民主党の姿勢を評価したい。是非、最後まで反対を貫いて欲しい。
中山太郎委員長や自民党の船田理事らは、委員会採決に反対する民主党議員に対し、「最近まで与野党で共同の法案策定の論議をしてきたではないか」「小沢 一郎代表の参議院選挙対策で反対に転じたのはおかしい」等と述べたという。日弁連や愛知県弁護士会の憲法委員会に所属し、国民投票法案の国会上程、審議の 経緯を多少なりとも知っている私は、彼らが「それはないよ」と愚痴をこぼすことに、同情を禁じ得ないところがある。
しかし、国民投票法案の審議経過を眺めると、自民党の民主党が、国民投票法案の制定に向け、協調してきたことは事実である。衆議院の採決の前日深夜まで、自民・民主の担当者が修正協議をしていた。
自民党の修正案は、国民投票の対象を憲法改正に絞り込むか「国政の重要問題」に広げるかという点を除けば、ほぼ民主党の提案を飲み込んだものだった。
民主党の国会議員の中には国民投票法案についても、早期制定を求める声が根強く、筆頭理事の枝野幸男議員もその一人であった。
ところが、安倍首相が、参議院選挙に憲法改正を争点にすると言いだした。参議院選挙勝利を至上命題とする小沢代表は、対決姿勢を演出しなければならず、 また、参議院選挙を生活格差是正等を争点としてたたかいたいと考えており憲法改正を争点にすることを回避したいと考えている、と報じられている。
自民党が憲法改正を争点に持ち出す意図は、安倍カラーを鮮明にしたいという狙いと共に、寄り合い所帯で憲法問題でも意見がバラバラな民主党の分裂、動揺を誘おうというところにある。民主党としては、これを避けたい、というところであろう。
今回の国民投票法案は、畢竟、戦力の不保持、集団的自衛権を禁止した憲法9条改正のレールを敷くためのもの以外の何者でもない。ここに根本問題がある。
しかし、民主党は、この根本問題で腰が座っていないのである。
もともと民主党は、基本方針として、「創憲」なるスローガンを掲げ、菅直人も「市民革命に替わる憲法改正」をめざすと発言している。
前原前代表等は、9条改正については、ある意味では自民党以上に積極的である。集団的自衛権についても、民主党の新憲法提言は、「国連憲章により制約さ れた集団的自衛権の行使は認める」という姿勢を打ち出している。「制約された集団的自衛権」とはどういうものか知らないが、アメリカが大陸の反対側で起こ した戦争にまで日本が集団的自衛権を行使して参加することまではできないが、日本の安全と独立に関連する(と内閣が判断した)ケースでは集団的自衛権の行 使、武力行使は認めるということであろう。
しかし、この見解についても、民主党の中でも異論があるようだ(例えば愛知の近藤昭一衆議院議員等。彼は、千種高校の一年後輩でもあり、日中関係の改善にも意欲的なところがあり、個人的にその活動に注目している)。
いずれにしても、憲法問題、国民投票法案についての自民・民主の対決構図、というものは、選挙向けという側面がぬぐえないのである。そもそも、自民党が 憲法改正問題を選挙の争点として押し出すという時に、堂々と受けて立とうではないかと言えないような政党が最大野党である、という点に、日本の民主政治の 閉塞状況をもたらしている要因がある。民主党は、今度の参議院選挙を格差是正をスローガンにたたかうと言っているが、フリーター、ネットカフフェ難民、不 安定・低賃金の派遣労働者を生みだしたのは、労働者派遣法の改正(製造業への派遣の解禁等)等の雇用法制の規制緩和であるが、これに民主党は賛成してき た。
いずれ、民主党については改めて私見を述べて見たいが、少なくとも、今日の時点では、民主党は自民党と共通の政策的基盤に立つ双子である。マスコミは、自民・民主の二大政党制の構図を描き出すのがお好きだが(特に「朝日」)、幻にすぎない。

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