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事務所だより

「刑事司法学習会」を行いました。

2019年11月12日

 10/16(水)名古屋市北生涯学習センターで、ホウネット主催の「刑事司法学習会」を開催しました。愛知県弁護士会刑事弁護委員会にも所属し活動している白川秀之弁護士を講師に、日本の刑事司法制度の問題点や望ましいあり方について学びました。

 学習会ではまず、現在の制度についての説明がありました。日本では日本国憲法の中で10条にもわたり刑事手続きについて規定されているのが特徴です(他の国の憲法ではだいたい1条程度しかないとのこと)。また、戦後の刑事訴訟法でも「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜(罪なき人)を罰することなかれ」「疑わしきは罰せず(疑わしきは被告人の利益に)」の理念が徹底されています。その背景には明治憲法下で不当な刑事手続きにより国民を弾圧したことへの反省があるといいます。

 次に、日本国憲法や刑事訴訟法によって不当な手続きが行われないように規定されているにも関わらず、えん罪が生じてしまう理由として、自白偏重の取り調べや検察による証拠隠しがあることが指摘されました。例えば自白を取るために被疑者の身柄を長時間拘束したり(=人質司法)、被疑者・被告人にとって有利な証拠を裁判に提出しなかったりする事態が、取り調べや裁判の中で発生しています。

 最後に、えん罪を減らすための対策として①取り調べの全面的な可視化②人質司法の是正③証拠開示制度の拡充などが挙げられ、各方面での取り組みについて紹介がありました。こうした取り組みにより、近年では勾留請求の却下率が上昇したり、裁判官の勾留決定に対する不服申立の容認件数が拡大したり、一定の成果が出ているということです。

 学習会の中では、実際に起きたえん罪事件の紹介もありました。自白を取るための強引で威圧的な取調や証拠隠しなど、刑事物のドラマや映画のようなことが現実にも起こっているのです。もし自分だったらそんな状況でもずっと無罪を主張できるのか・・・と考えるととても怖いです。しかし、一方で、制度の根本的な部分には過去の不当な弾圧への反省があると知り、勇気づけられもしました。過去の反省から生まれた刑事手続きの理念にあるように、被告人(被疑者)の権利を守り、不当な弾圧が起こらないような刑事司法制度の実現を期待します。

2019年11月5日           事務局 大野由結

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