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知って得する法律情報

コロナウイルスと会社への出勤

2020年2月28日

 コロナウイルスが社会に与える影響が懸念されます。
 コロナウイルスは現在、感染症法で定める指定感染症とされています。そのため、コロナウイルスの患者となった場合には、都道府県知事の指定によって患者の就業を制限することができます。昨今の状況から、コロナウイルスに感染した場合、この就業制限を受ける可能性が高いと思います。
 では、この場合、労働者の給料はどうなるでしょうか。指定感染症感染に伴う就業制限の場合には使用者の責に帰すべき就労不能ではないので、使用者に対して休業補償を請求することはできません。ただし、傷病手当金の請求はできるので、傷病手当金で休業による損失をまかなう必要があります。また、出勤できないことには労働者の責任はないので、出勤をしなかったことで労働者に不利益な処分を課すことはできません。

 では、労働者の発熱が続くが、コロナウイルスに感染したとの診断がまだない場合はどうでしょう。この場合は、使用者の指示によるか労働者の判断によるかによって結論が変わります。労働者が自主的な判断によって休業した場合には使用者に対して休業手当を請求できませんが、使用者の指示によって休業する場合には休業手当を請求することができます。
 ただ、労働者の判断による休業を理由に労働者に対して不利益な処分をすることはできません。現在の状況では、感染が疑われる状況下で休業をしたことで、労働者に不利益な処分を課すことはできません。

 2月27日に安倍首相が3月2日からの小中高の自主的な休校を要請しました。子どもの学校が休校になり、自宅にいるため出勤できない場合はどうでしょう。この場合には、上記の労働者の判断による休業と同じように考えることになりますので、使用者に対して休業手当を請求することはできません。

 上記の考え方は現在の法律を前提としての解釈ではありますが、法律と異なる扱いをすることを禁止するわけではありません。労働者が使用者に対して、労働者の判断での休業の場合でも一定の保障をするように求めるべきでしょう。使用者の側も労働者の申し出に対して真摯に対応しない場合には、ブラック企業と言われても仕方ないと思います。
 また、現在コロナウイルスの感染拡大によって、最も影響を受けている旅行関連業に関して、雇用調整助成金の適用拡大を実施しましたが、このような負担を社会全体で分担していくべきでしょうし、コロナウイルスによる影響が生じた場合に、何らかの助成措置をするように国に求めていくことが必要ではないでしょうか。

                                     2020年2月28日        弁護士 白川秀之

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