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知って得する法律情報

フラワーデモと刑法の改正

2021年5月25日

 フラワーデモのことを聞かれたことがあるでしょうか。
 2019年3月に4件の性暴力事件が第一審で相次いで無罪となりました。これらの判決に抗議し、性暴力の実態を伝えながら、被害者に寄り添う気持ちを示すために始まった集会です。フラワーデモという名前のとおり、被害者への共感の象徴として花や花のモチーフを身につけます。東京から全国に広がり、名古屋でも毎月11日に実施されています。
 4件のうち1件は、名古屋地裁岡崎支部の事案で、父親による未成年の実の娘に対する長年にわたる性暴力を認めつつ、娘が抗拒不能ではなかった(逆らうことができた)という理由で準強制性交等罪を無罪としました(高裁で逆転有罪判決。)
性暴力は被害者の尊厳を徹底的に傷つけるものです。しかしこれらの判決により、被害の痛ましさに比べて、性暴力を罪に問うにはあまりにも高いハードルがあるという刑法の限界が露呈しました。これを変えねばという強い思いで、多くの人が街角に集まったのです。
 フラワーデモでは、被害者に寄り添う気持ちを持つ人々に支えられて、被害者自身が声を上げ始めました。今まで被害者が語れなかったのは、社会が見て見ぬふりをすることで被害者の口を封じていたのではなかったか。社会の側の姿勢も問われています。
 現在、性犯罪に関する刑法の改正作業中ですが、教師や親族などの立場を利用した性虐待の抑制や、暴行脅迫要件の撤廃、時効の問題、13歳以上となっている性交同意年齢の引き上げなど課題は山積です。また刑法改正と同時に、興味本位なネット情報ではなく、自分を守り相手を尊重するために必要な知識を身につけるための教育的な取り組みが求められています。

弁護士 山内益恵(名古屋北法律事務所)
(「名古屋北部民商ニュース」へ寄稿した原稿を転機しています)

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