事業者の熱中症対策が義務化されました
2025年7月15日
今年6月から、労働安全衛生規則の改正により事業者の熱中症予防対策が義務化されました。近年熱中症による死亡災害が増加し、労災死亡事故全体の4%を占めるまでになりました。そこで、熱中症による死亡事故を防ぐため、事業者が講ずべき熱中症対策が明記されることになったのです。
具体的な対策としては、第一に、「熱中症患者の報告体制の整備・周知」が義務付けられました。事業者は、暑熱な場所で連続して行われる作業など「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときは、熱中症の疑いがある作業従事者を発見した者に、その旨を報告させる体制を整備しないといけません。また、整備した報告体制は、作業従事者に周知させる必要があります。
「熱中症を生ずるおそれのある作業」の定義は追って通達で定められますが、「暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間超の実施が見込まれる作業」などとされる見込みです。
第二に、「熱中症の悪化防止措置の準備・周知」が義務付けられました。事業者は、「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときは、あらかじめ作業場ごとに、①作業場からの離脱、②身体の冷却、③必要に応じて医師の診察または処置を受けさせること、④その他症状の悪化を防止するために必要な措置について、内容と実施手順を定め、作業従事者に周知する必要があります。
熱中症対策を怠った事業者は、都道府県労働局長または労働基準監督署長から、作業や建設物等の使用停止命令を受ける可能性があります。また、熱中症対策の実施義務違反には、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されることになりました。
地球温暖化の進展により、私達の社会活動において熱中症対策は、生命を守るための基本的な対策となっています。働く立場の方も、事業者の方も、今回の労働安全衛生規則改正について正しい知識を身に着け、労働現場での熱中症が根絶されるよう対策し、対策がおろそかになっている場合には、声を上げていく必要があります。
弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています