文字サイズ 標準拡大

知って得する法律情報

交通事故と損害賠償

2012年12月26日

交通事故と損害賠償について

正しい知識で適切な賠償を

 離婚や相続とならんで、法律事務所に相談が多いのが交通事故の被害者からの相談です。ほとんどの場合加害者は任意保険に加入しておりますので、示談交渉の相手方となるのは百戦錬磨の大企業。知識で太刀打ちできず、直接の加害者でもないために、言いたいことも言えない、という被害者側のストレスはとても大きなもの。また、保険会社は支払を抑えたいわけですから、提示される賠償額は裁判で認められる額に比べ低額であるという実情もあります。適切な賠償を得るために、正しい知識を身につけることは、とても大切です。

損害の種類

 交通事故の被害者が請求できる損害は、大きくは、身体に被った損害である「人身損害(人損)」と、車などの物が破損したことによる「物的損害(物損)」に分けられます。

 人損には、財産的損害と精神的損害(慰謝料)があります。財産的損害の中には、治療費、通院交通費、通院付添費、介護費など実際に出費が必要となった費用相当の損害と、勤務先を休んだことによる休業損害、営業損害、など得られるはずの収入が得られなくなったことによる損害があります。

 損害は、すでに発生したものだけではなく、確実に発生することが見込まれる将来の損害分についても請求することができます。たとえば、後遺障害逸失利益がこれに当たります。後遺障害逸失利益とは、事故の後遺症による労働能力の喪失の割合に応じて、将来賃金の減収分のことです。

専業主婦の休業損害と逸失利益

 専業主婦の場合、主婦業でお金をもらっているわけではありませんが、主婦の家事のおかげで、家族は家政婦を雇うことなく生活できているのですから、家事ができないことは立派な損失と言えます。そこで、全女子労働者の平均賃金を主婦業の対価と考えて、主婦業を休んだ日数分の休業損害を請求することができます。

 また、事故で後遺症が残り、将来の主婦業が制限されるようであれば、後遺障害逸失利益の請求も可能です。

 ちなみに、平成23年の賃金センサス(政府の賃金構造統計調査)によると、主婦の年収相当とされる全女性労働者(全学歴)の平均賃金は、355万9000円でした。

2012/12/6
弁護士 裵明玉(ぺみょんおく)
(「新婦人きた」へ寄稿)

このページの先頭へ