任意後見制度
2025年12月1日
皆さんは任意後見制度をご存知でしょうか。将来的に認知症等で判断能力が低下したとき、後見人による支援を受けることができます。後見人には、法定後見制度と任意後見制度という2つの異なるタイプがあります。
法定後見制度では、判断能力が低下している人のために家庭裁判所が後見人を選びます。選ばれた後見人は、判断能力が低下した本人の代わりに、財産の管理や施設入所の手続等を行います。他方、任意後見制度では、将来的に支援を受けたいと考える本人が後見人を選び、何をしてもらうかを契約で決めることができます。自分で後見人を選ぶので、選ぶ段階で本人に十分な判断能力があることが必要です。
2つの制度の最大の違いは、誰が後見人を選ぶかです。家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見制度では、本人や親族が希望しない人が選ばれてしまうことも少なくありません。家庭裁判所が最適と考える後見人を選ぶからです。そうすると、自分で選べる任意後見制度の方が良いと思うかもしれませんが、任意後見は後見人を選ぶ責任が伴います。親族の一人を後見人に選ぶと、他の親族に不満が生まれることもあるかもしれません。後見人を誰にするか、何を依頼するかを決めるときは、すぐ決めてしまわず、利害関係を有する親族ともよく話し合って、その人が財産管理を託すのにふさわしい人かを熟慮することが必要不可欠でしょう。
任意後見の契約は公正証書を作成して締結します。任意後見が始まるのは、本人の判断能力が低下した段階で家庭裁判所に申立てをし、申立人を監督する監督人を家庭裁判所が選任したときです。任意後見も実はこのようにして家庭裁判所が関与します。任意後見の後見人が行う支援内容は監督人のチェックを受けるので、支援の信頼性が担保されます。
後見人による支援は無償ではなく、報酬が支払われなければなりません。報酬は支援を受けている本人の財産から支払われ、任意後見の場合、報酬額は契約で定めることができます。
弁護士 中島万里(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)


