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知って得する法律情報

債権の回収(1)

2010年12月3日

『―債権の回収とは何か―』

 今回からは、「債権の回収」をテーマに、中小企業経営に役立つ知識をお届けしていきたいと思います。第1回である今回は、債権の回収という言葉の意味を簡単に整理してみましょう。

 企業の活動は、取引である契約を中心として行われ、契約によって生じる債権債務の履行を通じて正常な活動が行われますが、ときに、病理現象として債務不履行や、ひいては支払不能となって倒産ということが起こりえます。債権の回収は、そうした場合に問題となります。

 売買契約を想定すると、一般に、買主が商品代金を支払わない場合に、これを支払わせる方法としては、任意に支払わせる方法と、強制的に支払わせる方法の二つが考えられます。

(1)任意的回収
 買主と直接交渉して任意に支払ってもらう方法です。
取引期間が長期にわたっている場合には、その過程で取引上いろいろな貸し借りがあったり、人間的な絆ができていたりすることがあります。こういった従来の信頼関係に報いるために、倒産必至となっても、買主が支払いに応じてくれることがあります。また、買主が売主に再建への支援を期待して、支払いをすることもあります。

(2)強制的回収
 商品代金を強制的に支払わせるためにまず考えられるのは、訴訟を提起し、これに勝訴したうえで、その勝訴判決に基づき買主の財産を強制的に処分してお金に換え、配当を受けるという流れです。あるいは、買主が破産や会社更生といった法的手続に入るのであれ
ば、売主は、法律の定める手順に従って、債権者として配当を受けることになります。
しかし、配当ということになれば、各債権者の債権額に応じて平等に分配されることになります。これを債権者平等の原則といいます。そのため、買主(債務者)の資力がすべての債権を弁済するのに足りないときは、時間と費用がかかる割に、十分な回収ができません。
そこで、こうした問題をクリアするために、他の債権者に優先して支払いを受けるための手段として「担保」というものがあります。担保についても、この連載の中で詳しく説明していく予定です。

2010/11/24
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)

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