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知って得する法律情報

少年法改正

2007年10月24日

 昨今、マスコミでは凶悪犯罪の低年齢化、少年に対する厳罰化が叫ばれています。先の国会では少年法が改正されました。

そもそも少年法って?

 少年法は、第1条にその目的として「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正および環境の調整に関する保護処分を行う・・・ことを目的とする」と記しています。
この少年法の理念は「保護主義」と呼ばれており、成人に対する「刑罰主義」とは異なります。
子どもはいろいろな意味で未熟なため、自分の行動の危険性が分からなかったり、自分の感情を上手くコントロール出来なかったりします。これには家庭での暴力を身近に体験したり、親や周囲からバカにされて育ったりetcと少年によって千差万別の様々な要因が考えられます。一方で、少年は周囲から影響を受けやすく、少年を援助する環境が整っていれば、子ども自身が成長し立ち直る可能性も大きいのです。そのため、少年事件では、苦痛を与えて懲らしめるのでなく、付添人や家庭裁判所が少年と一緒になって、犯罪に至った原因やプロセスを考え、その影響を取り除き、少年の立ち直りをサポートしていく手続となっています。

少年法「改正」

 今回の改正では、?少年院収容年齢の下限をおおむね12歳以上としたこと、?触法少年(刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の少年)の事件について警察権限を拡大・強化したこと、?保護観察中の少年が遵守事項を遵守しなかった場合に少年院送致を可能としたことの3点が大きく変わりました。
これは、少年事件の厳罰化と言えるものですが、その理由として少年犯罪の凶悪化、深刻化をあげられています。

「改正」の問題点

 しかし、今回の改正の理由として言われているように、少年事件は本当に凶悪化したのでしょうか。戦後の統計データをみると、少年犯罪の総数はピーク時に比べて決して増えてはいませんし、殺人や強盗などという凶悪犯罪も減少しています。
たしかに世間を騒がすような重大な犯罪も起きています。しかし、単純に厳罰化をしても少年犯罪は減少しないということは、世界的な実践で明らかになっています。
また、少年は威圧や暗示を受け易いため、強要がない場合であっても虚偽の自白をしかねず、冤罪を生む可能性が高いので、警察官による追及は、少年事件の事実や動機の解明には適しているとはいえません。
子どもの生活環境が悪く息苦しいものになっていないか、子どもが自分や他人の大切さを実感できずに、非行や犯罪に追いやられてはいないか。少年の特性を熟知している児童相談所による調査や保護が充分に行えるように、人員や予算を拡充させ、少年法の保護主義の理念に基づいた援助こそ必要ではないでしょうか。

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