文字サイズ 標準拡大

知って得する法律情報

知的財産法(5)−商標権の効力−

2012年6月7日

知的財産法(5)−商標権の効力−

前回は商標の登録制度について説明しました。では、登録された商標を持っている人には、どんな権利が認められるのでしょうか?

Q1.私が登録した商標と似たネーミングを使って商売をしている人がいる! どうしたらいいの?

A1.商標法では、権利侵害に対する救済を規定しています。その第一が差止め請求権です。差止めとは、自己の商標権を侵害する者、または侵害するおそれのある者に対して、侵害の予防、停止を請求することですが、要するにこれ以上そのネーミング等を使わせないようにするということです。

差止め請求をする際には、あわせて侵害行為に使用された物の廃棄、使われた設備の除去その他侵害の予防に必要な行為も請求できます。商品が残ったままでは、いつまた同じ商売を始めるか分かりませんので、その予防のためです。
また、金銭的には、侵害者に対して損害賠償や不当利得返還の請求を行うことで回復を図ることになります。裁判で勝訴判決を取得するなどすれば、相手方の財産に強制執行することも可能です。

さらに、侵害者に対しては、信用回復措置(謝罪広告の掲載など)を請求することもできます。新聞紙上などで、「あの商品は○○社のネーミングをパクってました。ごめんなさい」と謝罪させることで、パクられた会社は自社の信用を取り戻すことができます。

Q2.逆に他人にネーミングの使用を認めてあげることもできるの?

A2.もちろん、自分の登録商標を他人に使用させることは可能です。その際には、「専用使用権」または「通常使用権」を他人に対して許諾するという手続をとります。

専用使用権とは、その人に商標の独占的な使用を認めるということです。そのため、自分もその商標を使えなくなります。仮に使ってしまうと、「専用使用権の侵害」となり自分が差止め損害賠償請求を受けることになってしまいます。

これに対して、通常使用権は、「その人にも使わせてあげる」ということであって、自分は変わらず商標の使用を継続できます。また、さらに別の人に通常使用権を許諾することもできます。世間に広く知られた信用のある商標であれば、使いたい人は多くいますので、こうした権利を、対価を得て他人に許諾することで、ビジネスの幅も大きく広がるでしょう。

2012年2月29日
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)

このページの先頭へ