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知って得する法律情報

4月から労働審判制度がスタートします。

2006年2月2日

労働審判制が始まります。

 ホウネットの運営委員である愛知労働問題研究所の西野賑郎さんからの投稿です。

どんな制度ですか?

 2006年4月から始まる、解りやすくいえば働く人のための紛争解決をめざす、労働者のための司法制度です。この制度は、速くて、効力が大きく、手続きが簡単です。労働審判は3回以内の期日で審理が終わります。1回目で調停が成立すれば、それで終わります。速いのがこの制度の利点です。審判が決まれば裁判と同じ効力を持ちます。申立書も簡易なものになります。いま全国で500人の民間審判員が訓練を受けて、審判制度に備えています。外国の例は下記の表のようです。

どんなときに利用できますか?

 ある日、突然に理由も示さず「明日から来なくていい」と解雇通告された。経営が不振だから、整理解雇するといわれた。自己都合で退職したら退職金が払われなかった。残業手当が支払われていない。などなど無法がまかり通っています。こんな時こそ労働審判制度です。

なぜ、審判制度が生まれたのですか?

 増え続ける個別労働紛争の短期解決をめざすためです。いま、多くの職場で労働者の働き方は苦痛でゆがめられています。長時間労働の押しつけ、ノルマによる過密労働、生産優先で休憩時間もあいまい、有給休暇も自由に取れない、などの実態が訴えられています。通勤手当も社員にはあっても、臨時社員や派遣社員には出ていないとか、片道しか出さないという会社があって、差別が公然とまかり通っています。賃金も時間給でサービス残業が押しつけられ、文句を言えばすぐ解雇になるとか、お前さんは外国人だからと、最低賃金制を下回る500円/1時間などという、無法が相談されています。

個別の紛争が増えているのは、どうしてですか?

 これは非正規社員(パート、アルバイト、派遣、臨時、契約社員など)が、2005年5月の統計で1591万人と増え続けていることと、大きな関連があります。すでに働く人の33%が無権利状態で労働条件もあいまいのまま働かされているのです。若者にいたっては49%が非正規労働に従事しています。労働組合があっても労働者の労働条件を顧みない、会社ぐるみの組合も多く見られます。これでは働く人は堪ったものではありません。
厚生労働省がまとめている個別の労働紛争は、増え続けています。愛知県だけを見ても労働紛争の相談は前年度33.33%増の41,163件です。その内、民事の労働紛争相談は6,290件で、内容は解雇1953件とトップで、労働条件の引き下げ、いじめ、などです。

  フランス ドイツ イギリス アメリカ
裁判制度 労働裁判所 労働裁判所 雇用裁判所 通常裁判所
審級制度 第1審:労働裁判所
*控訴審:控訴院
*最終審:破棄院
*印は通常の裁判所
第1審:労働裁判所
控訴審:州労働裁判所
最終審:連邦労働裁判所
(5系統の最高裁判所がある)
第1審:雇用裁判所
控訴審:雇用控訴裁判所
*第3審:控訴院
*最終審:貴族院
*は通常の裁判所
第1審:連邦地方裁判所
控訴審:連邦控訴裁判所
最終審:連邦最高裁判所
第1審裁判所
の構成
労働裁判所には職業裁判官はおらず,
労使選出の非職業裁判官のみで構成
職業裁判官と非職業裁判官2名(労使各1名) 職業裁判官と,素人審判官
(労使団体との協議後,国務大臣が任命)
労働裁判を扱う特別な裁判所はない

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