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知って得する法律情報

SNSでの誹謗中傷 ~発信者情報開示請求で加害者を特定するには?

2025年12月15日

 SNSやインターネット上での誹謗中傷は増加しており、被害者は精神的苦痛や社会的信用の失墜といった深刻な被害を受けています。匿名性に隠れての悪質な投稿に対しては、泣き寝入りせず「発信者情報開示請求」により加害者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴に踏み切ることが可能です。

 発信者情報開示請求とは、SNS運営者などに対し、誹謗中傷を書き込んだ人物の氏名や住所、連絡先などを開示させる手続きです。流れは大きく二段階に分かれます。

 まず、第一段階として、投稿先のサイト運営者(コンテンツプロバイダ)に対し、発信時のIPアドレス(インターネットなどのネットワークで個々の機器を識別するための「インターネット上の住所」)やタイムスタンプ(電子データが、ある特定の時刻に存在し、それ以降改ざんされていないことを証明する技術)の開示を求めます。ただし、運営者による任意開示は難しいため、裁判所に仮処分を申し立てるのが一般的です。その後、第二段階では、得られたIP情報から通信事業者(経由プロバイダ)を特定し、さらに発信者の氏名・住所を開示させます。この段階も訴訟手続きが必要になる場合が多く、2022年のプロバイダ責任制限法の改正により両手続きを一括で進められるようになり、被害者の負担は若干軽減されました。

 開示請求が認められるには二つの要件があります。第一に「権利侵害の明白性」が必要で、単なる悪口ではなく、名誉やプライバシーを侵害する具体的で社会的に許容されない表現であること。第二に「正当な理由」が求められ、得た情報を損害賠償請求や刑事告訴など正当な目的で利用する必要があります。

 また、証拠保全は極めて重要です。投稿は加害者本人等によって削除される可能性があるため、スクリーンショットやURL記録などで確実に保存しておくことが不可欠です。

 加害者を特定する手続きは専門性が高いため、弁護士に相談し、法的に適切な対応を取ることが望まれます。早期に専門家へ相談することで、被害回復と再発防止につながります。

弁護士 白川秀之(名古屋北法律事務所)
「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています

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