中小企業メールマガジン №21
2011年3月28日
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 弁護士法人名古屋北法律事務所 ホウネット 中小企業メールマガジン No.21(2011年2月15日発行) _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ∞∞∞I N D E X∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ○コラム ◆◇中小企業と交通事故の深い関係(3)◇◆ ―賠償金を支払った会社から社員に対する求償について― 弁護士 長谷川 一裕 ◆◇「中小企業経営に役立つワンポイント豆知識」◇◆ 『債権の回収(6)―保証人―』 弁護士 加藤 悠史 ◆◇TPP(環太平洋経済連携協定)を考える◇◆ 弁護士 長谷川 一裕 ○行事案内 ○編集後記 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ■□コラム━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇中小企業と交通事故(3)◇◆ ―賠償金を支払った会社から社員に対する求償について― 弁護士 長谷川 一裕 前回、社員が業務中に交通事故を起こした場合の会社の損害賠償責任について、民法の使用者責任(715条)、自動車の運行供用者責任(自動車損害賠償保障法)について説明しましたが、それ以外にも様々な問題があります。 従業員の事故について会社が被害者に損害賠償金を支払った場合、同賠償金を従業員に対して求償(請求)できるかという問題があります。 民法715条3項は、この場合「使用者が被用者に求償できる」と定めています。 社員が任意保険に加入している場合には問題になりませんが、そうでない場合に深刻な問題となります。 タクシー会社や運送会社では、保険料負担を嫌って任意保険に加入しないケースが増えており、こうした会社では、ドライバーが事故を起こし会社が賠償した場合に社員に対する求償を行うケースがあります。 この点について裁判所は、無条件に求償は認めないという立場を採用しています。 715条に関する判例を見ると、「事業の性格、規模、業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様(過失の重大さ)、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度等の諸般の事情を考慮し」「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」求償できるという考え方が主流です。 裁判所が無条件に求償を認めないのは、会社は人を雇用して経営規模を拡張して利益を上げているのに、損害が生じた場合だけ求償を全面的に認めるのは、公平の原則に合致しないという配慮と言われています。 具体的にはケースバイケースですが、社員に飲酒運転等の重大な過失がない場合には、全額の求償はできないと見ておくべきです。 実は、この問題は、交通事故の被害者に対する賠償責任の問題に限定されません。 製造メーカーの社員が作業中に居眠りした間に工作機械が誤作動を起こして機械や製品が破損する等の損害が生じたり、運送会社のドライバーが荷物を落下させたり居眠りしたりして事故を起こした場合等に、会社と社員の間で係争になる場合が少なくありません。 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ ◆◇「中小企業経営に役立つワンポイント豆知識」◇◆ 『債権の回収(6)―保証人―』 弁護士 加藤 悠史 今回は保証人についてです。 前回も少し触れましたが、強制執行での回収には、債務者に資産があることが重要になってきます。 そのため、契約等に際しては、債務者の資産調査がまずは重要なのです。 しかし、債務者の資力が必ずしも十分ではないこともあります。 そういった場合など、債務者以外の人の財産からの回収を可能にしておくために、保証人を立てることがよくあります。 保証人をたてる場合には、債権者と保証人が保証契約を締結することになります。 普通は債務者が保証人をつれてきますが、保証契約は債権者との間で結ぶことになります。 そして、保証契約の締結は、現在の民法では書面によることとされています。 債務者との契約書と別々に取り交わすことまでは必要ないのですが、口頭だけでは保証契約は成立しないのです。 ところで、保証人には、単なる保証人と連帯保証人とがあります。 何が違うかというと、単なる保証人には(ア)催告の抗弁権と(イ)検索の抗弁権があります。 難しい言葉ですが、(ア)催告の抗弁権とは、債権者が保証人に請求をしてきたときに、まずは債務者に催告するように請求できる権利です。 また(イ)検索の抗弁権は、債務者の財産への執行をするまでは払いませんと拒否することができる権利です。 いずれにしろ、まずは、債務者に対してやるべきことをやらないといけないのです。 しかし、連帯保証人にはそのような抗弁権はなく、債務者への請求もなしに、いきなり連帯保証人に対して請求することもできるのです。 連帯保証人は、それくらい責任が重たいのです。逆に債権者になる場合には、連帯保証人をたててもらえるなら、債権回収という意味でも重要な担保となります。 ただ、保証人から債権を回収しようとおもった場合には、実際には、任意に保証人が支払いをしてくれなければ、前回までにご説明したように、債務者に対してと同様、債務名義をとって強制執行をすることが必要になります。 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ ◆◇TPP(環太平洋経済連携協定)を考える◇◆ 弁護士 長谷川 一裕 永田町で喧しく論されているTPP−環太平洋経済連携協定は、中小企業の未来を考える上で極めて重要な問題です。 菅総理大臣が『平成の開国』、『第三の開国』というキャッチフレーズを掲げて推進し、経団連等の財界も推進の立場一色に見られます。 政治家の勇ましい発言を聞いていると、日本は経済的に鎖国していたのかと思う向きもあるようですが、既に日本の工業製品の関税率は極めて低いレベルにあり、日本経済は十分に開かれています。 法人税の税率問題でも「税率を下げなければ生産の空洞化が起きる」という危機感が叫ばれ、財政悪化の中で5パーセントの税率引き下げが発表されましたが、声韓国が米国やアジア諸国とFTA等を締結し、サムソンや現代自動車が輸出を伸ばしているのを横目に睨んで前のめりになった輸出大企業のキャンペーンに惑わされず、正確な事実を押さえた上で論議していく必要を感じます。 TPP推進論の最大の壁は、言うまでもなく農業問題です。 農産物についても随分関税は引き下げられていますが、牛肉、乳製品、コメ等は故国内農家保護のために比較的高い関税がかけられています。 もし例外なき関税撤廃となれば、農家は壊滅、食糧自給率(カロリーベース)は13パーセントに低落(現在は約40%)、3兆円以上の損失が生じるという農水省の試算も発表されています。 十分な論議が行われることを期待したいと思います。 それにしても、最近、特に懸念しているのは一部輸出大企業の利益と国民全体の利益との関係です。 日本は資源がない→輸出でメシをくっていくしかない→輸出企業の利益保護のための政策を打て、という思考パターンに慣れすぎてはいないか。 私ももう一度振り返ってみたいと思います。 ■□行事案内━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 映画『いのちの山河』上映会 とき:3月4日(金) 場所:名古屋市北文化小劇場ホール 上映時間: 1.10:00〜 2.13:00〜 3.15:30〜 4.18:30〜 上映券: 大人/前売券1,200円 当日券1,500円 小中高生/ 800円 主催:『いのちの山河』上映実行委員会 申込先:名古屋北法律事務所 熊谷 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 暮らしと法律を結ぶホウネット第8回総会&名古屋北法律事務所設立10周年記念行事『つながる未来へ』 とき:5月29日(日) 場所:ウィルあいち ☆総会☆ 13:00〜14:00 ウィルあいち 大会議室 参加費用:無料 ☆鎌田實さん講演会☆ 15:00〜16:30 ウィルあいち ウィルホール 参加費用:1,000円(会員,70歳以上の方,障がい者の方は500円) ☆懇親会〜つながる夕べ☆ 17:00〜19:00 ウィルあいち 大会議室 参加費用:2,000円(軽食を用意いたします) ■□編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 昨日はバレンタインデーでした。 当事務所では所員の人数が増えた数年前から、各自の財政的負担を鑑みて「義理チョコは無し、お返しも無し」という”紳士協定”が結ばれていて、事務所のバレンタインは華やかさがありません。 でも実はチョコレートを楽しみにしているのは所員の家族だったりするので、内心残念に思っている人もいるとかいないとか。 ところで、1年でもっともチョコレートが売れるこの時期ですが、チョコレートの原料となるカカオ豆の生産国では、人身売買によりカカオの収穫で児童の強制労働が行われているという悲しい現実があります。 私もチョコレートは大好きですが、この現実を思うとチョコレートの一粒一粒を食べるのも複雑な思いです。 近年、コーヒーやチョコレート等のフェアトレード商品が注目されています。 なかなか販売しているお店に出会う機会は少ないですが、フェアトレード商品を見かけたら積極的に購入するよう心がけています。 ホウネットニュース16号が完成しました!現在発送作業中です。 会員の皆さまのお手元へはまもなく届きますので、今しばらくお待ちくださいね。 ↓↓↓↓↓ご感想や御意見はこちらから↓↓↓↓↓ hounet-sme@kita-houritsu.com ↓↓↓↓↓ブログのバックナンバーをご覧できます↓↓↓↓↓ https://g104.secure.ne.jp/~g104135/melmag/ ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△ 【中小企業メールマガジン】 中小企業メールマガジン No.21(2月15日発行) 発行日:月2回・月曜日発行(休刊:祝日、年末年始など) 創刊日:2010年4月5日 ↓↓↓↓↓本メールマガジンの登録はこちらから↓↓↓↓↓ hounet-sme@kita-houritsu.com ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 【発行元】 ======= 弁護士法人名古屋北法律事務所 ======= ======= 暮らしと法律を結ぶホウネット ======= ─┌──┐ 〒469-0819 名古屋市北区平安2-1-10 第5水光ビル ─│\/│ TEL:052-910-7721 FAX:052-910-7727 ─└──┘ MAIL: hounet-sme@kita-houritsu.com HP:http://kita-houritsu.com/ Copyright(C) 名古屋北法律事務所 All rights reserved.