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事務所だより

コナン君の裁判員制度問答No.9 豆電球No.68

2008年9月4日

コナン君の裁判員制度問答No.9

コナン おはよう。裁判員制度について、野党の中から延期論が出てきたね。裁判員制度、本当に実施されるのか心配になってきたがね。

長谷川 その通り。小沢民主党代表は「日本の国情に合わない」と言い、社民党や共産党も「延期」を言い出した。国民の世論調査等でも、参加に消極的な意見が多い。最も、これは予想されたことだがね。
延期論の中にもいろいろある。刑事裁判への国民参加自体が「国情に合わない」というのはともかく、裁判員制度の導入は正しいとしながら、条件整備が遅れ ていることを理由とした延期論には、耳を傾けるべき点もある。条件整備が遅れていることは確かであり、国民の不安の広がりもそれを反映したものだからだ。
問題は、条件整備の遅れを理由として延期することが良いのか、制度を実施した上で条件整備を進めるべきか、という点だろう。

コナン その「条件整備」というのは、どういうことなの。

長谷川 働いている人が安心して裁判員になれるための休暇の保障、託児所の整備、障害者が裁判員に選任された場合の様々な手当等が重要だ。大企業等では、公休として保障するところも出てきているが、中小企業では大変だろう。
国民の不安の払拭ということも重要だ。重罪事件を裁くことに伴う心理的負担もあるだろう。裁判官と協働で審理を行い、評決をすること、特に法律知識は必要なく自分の素直な意見を述べれば良いこと等を理解してもらう努力が必要だろう。

コナン NHKの「視点・論点」を見ていたら、「検察官の手持ち証拠の開示」「取り調べの可視化」が冤罪防止のために必要だという意見が出ていた。

長谷川 同感だ。重要なことは、どうやってそれを実現するか ということ。裁判員制度の導入をきっかけとして、「検察官は不利な証拠を出さない」「裁判員の審理の前に検察官に不利な証拠でも審理に必要なものは開示さ せよう」という声が出てきた。また、被告人の捜査段階での自白が任意になされたものか否かについて(自白調書の任意性という)、裁判員に軸長所の任意性を 認めさせるためには取り調べの可視化も検討せざるを得ないと、検察・警察当局が考え始めた。

コナン そういう冤罪防止のための手当ができない以上、裁判員制度は延期した方が良いという人もいるらしいよ。

長谷川 気持ちはわかるが、裁判員制度が梃子となっているのに、それを放棄して、どうやって検察官の手持ち証拠の全面開示、取り調べの全面可視化を実現しようとしているのか。「延期論」には、その展望、戦略がないと言わざるを得ない。

コナン じゃあ、長谷川さんは、延期論には与しないという訳だね。

長谷川 延期というが、おそらくいったん延期すれば、そのまま「お蔵入り」ということになる可能性が大きい。実施した上で、条件整備のために一層努力すべきだと思う。まさに、その点で、議会と政治家の見識が問われる問題だと思うよ。
司法に携わる者は、第1に、刑事裁判に国民が参加することの意義を普及するよう努力すること、第2に、裁判員になる国民の不安解消の方策、検察官の手持ち証拠の早期の全面開示の実現等を求める運動を裁判員制度を梃子に進めること、この二つだと思うね。

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