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事務所だより

コブクロの「桜」 豆電球No.7

2006年1月26日

コブクロの「桜」

私は、Jポップには疎く、いつも余り聞く機会はないが、師走になると歌謡番組や紅白歌合戦等を見る。そこで、気に入った曲があったりすると、娘に曲名や歌手の名前を聞いたりしてCDを買って聞いている。
昨年の年末に、ipodを手に入れたので、正月休みに、気に入った曲をインターネットで購入し、ipodにインポートして聞いているが、お気に入りは、 コブクロが歌う「桜」だ。桜が咲き、散る、春の季節感を曲全体に漂わせながら、青春期の清冽な哀しさともいうべき心情をを歌っている。ボーカルもいい。どんな人なのだろうか。

私は、この曲を聞いて嬉しくなり、感動し、熱いものがこみ上げた。
この曲を聞いて感じた懐かしさ。
私は1958年生まれだが、おそらく40台後半から50台以降の私と同じ世代は、この曲を聞くと、荒井(松任谷)由実の「卒業写真」や、イルカの「なごり雪」を思い出すのではないだろうか。
さびの部分で、次のようなフレーズがある。
「町の中 みかけれた君は寂しげに 人ごみに紛れてた
あの頃の住んだ瞳の奥の輝き 時の早さによごされてしまわぬように」
私は、これを聞いて、「卒業写真」の「ひとごみに流されて変わっていく私を あなたは時々遠くで叱って あの頃の生き方をあなたは忘れないで あなたは私の青春そのもの」という「卒業写真」のくだりをすぐに思い出した。
「桜の花びら散るたびに届かぬ思いがまた一つ 涙と笑顔に消されていく
そして また大人になった」
これは、イルカの「なごり雪」の世界ではないだろうか。プラットホームに降り積もる「なごり雪」に仮託して青春の別れを歌った「なごり雪」、出会いと別れが交錯し、何かが始まり何かが始まる桜の季節を歌った「桜」ー。

懐かしさだけではない。
次のような歌詞には、四季のうつろいに鋭敏な季節感、自然と人間、自己を一体としてイメージする心象、「桜」という花に寄せる愛着、一面に咲き誇る花々より一輪の花を慈しむ心情ーこうした日本人独特の心情が流れてはいないだろうか。
「心の岸辺に手放したくない花がある
それは たくましい花じゃなく、はかなく揺れる一輪か」
「なくさないで 君の中に さくら」
「会いたいときにあえない寂しさ わけあう二人 太陽と月のようって」
「実のならない花もつぼみのまま散る花も あなたと誰かのこれからを春の風を浴びて 見てる」
コブクロというグループは、おそらく私とはふたまわりも違う若い世代に属する人たちだと思うけれど、この国に脈々と受け継がれてきたみずみずしい日本人の心ーそれは、豊かで繊細な自然に恵まれた日本独特のものであり、私たちが誇りにすべきものであるーが、今の若い世代にもやはり引き継がれていることを私は感じたのである。

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