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事務所だより

少子化問題と猪口大臣のおはなし 豆電球No.5

2006年1月16日

少子化問題と猪口大臣のおはなし

日曜日のNHKの討論番組で、猪口邦子少子化担当大臣のインタビューが放映されていた。猪口大臣は、昨年総選挙で初当選、小泉改造内閣で小泉チルド レンとして入閣した人だが、以前、国連軍縮大使だったとき、衆議院の憲法問題調査会に参考人として意見を述べたことがある。正確な内容は記憶していないが、その意見の基本的な趣旨は、日本は平和憲法を持っているからこそ、軍縮問題、地雷や小型兵器等の軍職交渉でも積極的な役割を発揮しえたのであり、憲法9条は軽々に変えるべきではないというものであったと記憶している。

その猪口氏が、アメリカを好み、憲法9条を嫌う小泉内閣のもとで、しかも憲法9条改正問題が永田町で取り上げられているこの時期に、小泉内閣の閣僚として、憲法問題に関してどのような言動をとるのか、私は陰ながら注目しているので、前期の番組での猪口大臣の発言に関心を持ち、聞いてみた。

聞き手の解説委員が、これまで政府はエンゼルプランをはじめ様々な施策を講じているが、なぜ、効果があがっていないかという質問をしたが(この質問は、なかなか本質を突いている)、施策を講じなかったらもっと出生率は下がっていたのではないか、効果はあったと思う等の苦しい答えをしていた。

政府は、担当大臣を置き、近い時期に総合的な計画を打ち出す予定であり、出産費用無料化等が報じられている。しかし、小泉内閣が打ち出すであろう少子化対策が問題の根本的要因にメスを入れることは期待できないと思う。

若い夫婦が子供を生まない要因は様々であろうと思うが、根本にあるのは、第一に日本の労働現場と雇用のあり方、第二に、格差社会の進行、という構造的な要因があると思う。
日本人の働きすぎは、「カロウシ」が世界の共通語として知れ渡ったように、異常である。昨今はリストラの中で人員が減らされ、若い世代、特に30前半の世代が長時間労働を余儀なくされている。

これにメスを入れるなら、まず、残業時間の上限を法的に規制することを求めたILO第一号条約(確か、1919年頃に制定されている)を未だ日本が批准していないという異常な状況を是正すべきだろう。小泉総理は、諸政策ではグローバルスタンダードを言うが、それなら、まず残業時間の上限を法的に規制すべき ではないのか。

少子化の傾向に拍車をかけているのが、格差社会の進行、特に若い世代での所得格差の広がりがある。所得分布と出生率の低下傾向の相関関係を分析した統計的研究があるかどうか知りたいが、派遣、アルバイト等の非正規雇用労働者が若年世代の三割を占めるという雇用構造の変動の中で、結婚したくても結婚できない、子供を生みたくても生めない、生みづらいと考える若年労働者、世帯が増えていることは明らかだ。
少子化傾向に本当に歯止めをかけるには、この構造的要因にメスを入れることが絶対に必要である。

ところが、小泉内閣が展開してきた施策は、まさに、こうした要請に逆行するものであった。競争原理の強調、1800時間の時短目標の放棄、労働者派遣法の 度重なる改悪による派遣の自由化等、枚挙に暇がない。企業の利潤追求のための障害となる規制を次々と緩和するというのが、新自由主義である。その権化であ る小泉政治では、少子化に抜本的な歯止めをかける事は絶対にできないと断言しておこう。

猪口さんは、その大枠の中でしか仕事ができないような気がするので、持ち場以外ではあるが、憲法9条改正問題などについて見識ある言動を取られることを期待したい(むなしい期待であるとお叱りを受ける向きもあろう)。

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