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事務所だより

真夏の総選挙を眺める 豆電球No.90

2009年8月7日

真夏の総選挙を眺める

選挙が近づきました。真夏の選挙は候補者も大変でしょう。
民主党政権が確実のようです。いいじゃないですか。派遣切りや格差の拡大、年収200万円以下の労働者が1000万人等々をもたらし、日本社会を疲弊させた自公政治を有権者の審判で追い落とすことができるなら快挙です。

問題は、民主党政権のもとでどのような政治が行われるか、という中身ではないかと思います。
年金、医療、福祉の充実は、どの党も言っています。民主党は、月額2万6000円の「こども手当」を言っていますが、大変なサービスぶりですね。
日本共産党は、医療費の窓口三割負担の段階的無料化、高校教育費無料等の政策を出していますが、しっかりとした財源論を打ち出していることが特徴。グアムへの米軍基地建設等の米軍再編のための3兆円負担削減等の無駄を削ること、大企業の法人税の税率引き上げ、有価証券取引課税の強化等の富裕者への課税の強化をきっちり言っています。民主党は、無駄を削ると言いますが、具体論が乏しく自民党から突っ込まれるかもしれません。大企業、富裕者に対する適正課税に踏み込んでいない、踏み込めないということでしょうか。従って、民主党の路線は、必ず消費税増税に行き着きます。小沢さんや鳩山さんは、まずばらまきをやってから消費税の増税、という「エビを鯛をつる」路線を念頭においているのでしょう。民主党がそう考えているなら、「4年間は上げないが、それ以降は上げるだろう」と堂々と言って欲しい気がします。
民主党は、高速道路の無料化、ガソリン税の暫定税率の引き下げを言っています。高速道路が1000円になったりガソリン代がやすくなるのは歓迎といいたいところですが、いずれも環境対策に逆行していませんか。そのために3.5兆円程度の予算が必要とのことです。日本共産党は、ガソリンの暫定税率は引き下げた上で環境税にすると言っています。また、高速道路の無料化は行わず、そのための予算は福祉や環境対策、少子化対策にまわせ、と言っています。これらの政策は、特別給付金と似た人気目当ての場当たり的政策に見えます。環境問題にも目配りをしながら、国民の媚びない正論を吐いてほしいと思います。

法律家の立場からは、民主党政権のもとでの憲法、安保の話が気になります。
来年は、日米安保50年の年です。日本共産党が持論にしている日米安保廃棄が早々に実現するとは思えませんが、イラク戦争に真っ先に賛成したり、米軍移転に拒否を投じるといった、「アメリカのポチ」(小林よしのり)と言われるような従属的な外交は、まずやめてほしい。
もともと、日米安保条約は憲法を最高法規とするわが国の法体系を脅かすものです。核兵器搭載艦の通過を黙認するという日米密約が暴露されました。米兵が公務外で犯した犯罪については日本が第一次裁判権を持っていますが、これを放棄する密約の存在も明らかになりました。憲法と安保は両立しないという点にしっかり目を向けなければなりません。軍事同盟ではなく、対等な平和友好関係として日米関係を構想する政党が日本共産党しかない、というのは寂しい限りです。
民主党の鳩山さんは、9条2項は「最大の欺瞞」である。という持論を持っています。鳩山さんも管さんも、非核三原則のうち「持ち込まない」を削除してはどうか、という考えを兼ねてから表明しています。こうした議論を言う人は、いつも「(国際情勢、北朝鮮問題等を考えて)現実的にならなければならない」という決まり文句で正当化しようとします。しかし、日本の戦後の歩みは、この理想を曲がりなりにも掲げてきたのです。平和憲法を持っていること、唯一の被爆国であること、この二つを取り去ってしまって、日本の国家としてのアイデンティティー、個性をどこに求めるのですか。そんな質問をしてみたくなります。

総選挙は、主権者団が国会を構成する重要な国家行為です。選挙は、どんな政権(与党)を作るか、という選択とともに、どんな野党を作るかの選択です。
どんな与党を作るかという「目」、どんな野党を作るかという「目」、二つの目で政治を見て、貴重な一票を行使したいものです。

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