文字サイズ 標準拡大

事務所だより

障害者自立支援法違憲訴訟 名古屋地裁で勝利的和解!

2010年4月28日

2010年4月14日、名古屋地方裁判所で、障害者自立支援法違憲訴訟愛知原告の坂野和彦さんと、被告国、名古屋市との間で和解が成立しました。

障害者自立支援法違憲訴訟は、全国14地裁で70名の障害者が、障害者自立支援法の応益負担制度の違憲性の確認などを求めて闘ってきた裁判です。2008年10月31日の第一次全国一斉提訴を皮切りに、第3次訴訟まで提起されました。ここ愛知では、知的障害のある29歳(提訴当時)の青年坂野和彦さんが、「作業所で働いているのにお金を徴収されるのはおかしい」などとして、名古屋地方裁判所に訴えていました(第3次提訴)。

この訴訟で問題とされた応益負担制度とは、障害福祉サービスの利用につき、その費用の1割を障害者自身に負担させる仕組みのことです。応益負担制度は、その導入前から、障害者にとって生きるために不可欠な障害福祉サービスを、対価を払うべき「益」、特別な恩恵と見なすもので差別的であるとして、障害当事者の猛反発を受けていました。しかし、2005年に、その反対の声を押し切る形で制度が導入されてしまい、全国各地で当事者が訴訟に立ち上がりました。

訴訟では、それまでの収入に応じた費用負担(=応能負担)から応益負担への転換が、障害者と家族、福祉の現場に恐慌とも言うべき多大な混乱をもたらしたことが明らかにされました。貧困の中での負担増に苦しみ、一家心中を起こした家族、唯一の社会とのつながりであった作業所をやめざるをえなかった青年・・・全国各地の裁判所で応益負担のもたらした人権侵害状態が明らかにされるにつれ、応益負担の廃止を求める世論も高まりを見せました。

今回の訴訟上の和解は、そのような中で、本年1月7日に、障害者自立支援法違憲訴訟の原告団及び弁護団と、国(厚生労働省)との間で取り交わされた基本合意文書に基づくものです。基本合意文書で、国は、応益負担制度の導入等により、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、反省を表明するとともに、速やかに応益負担制度を廃止することなどを合意しました。これは、判決を前提としない段階で(つまり裁判で敗訴する以前の段階で)、国が反省の意を表明し、制度・法律の変更自体を約束したものであり、歴史上類をみない画期的なものでした。
14日の訴訟上の和解は、この基本合意書の内容を裁判上において改めて確認するとともに、原告が国の真摯な姿勢を受けて、訴えを取り下げ裁判を終結させたものです。最後の口頭弁論期日では、裁判長が基本合意文書の全文を読み上げ、改めてその内容が確認されました。当事務所からは、弁護団の加藤弁護士、裵弁護士が参加し、原告、支援者と勝利的和解の喜びを分かち合いました。

4月21日の東京地方裁判所での和解を最後に、全国で闘われた訴訟は終結し、今後は新法制定に向けた新たな運動を繰り広げていくことになります。

このページの先頭へ